ソニー転換社債 ゴールドマンの株式分離が危険な理由

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ソニーの転換社債をゴールドマンサックスが株式分離を行った。これにより、大量保有報告書を提出することなく、CBの10.5%分まで買い集める事が可能となった。

日経新聞2012年12月8日15面に、ソニーCBを、外資系証券会社のゴールドマンサックが再加工し販売することが記事となっている。ソニーの株価予想は円安になるかどうかにも左右されるが、水面下で大株主が現れる可能性がでている。

新株予約権と社債を分離

ソニーが11月30日に発行した新株予約権付社債(転換社債=CB)で、ゴールドマン・サックス証券がCBを複数の投資家から買い取り、新株予約権と社債を分離したうえで、社債部分を新たな金融商品として投資家に販売したことが7日明らかになった。リパッケージ取引といわれるもので、CB買い取りは議決権行使が目的でないとしている。
転換社債の特徴は、社債に新株予約権をつけることで、株価の上昇時は株式への転換の権利を行使。株価が低迷している事を現金での償還を選択することができる点であり。

  • 基準となる株価以上に上昇した時は株式に転換
  • 株価が低迷した時には現金で償還

企業にとっては、金利を低く抑えられる上に、業績が好調であれば自己資本を積み増しできるメリットがある。さて、ゴールドマンサックスが、社債と新株予約権を分離して販売していたようだ。

10.5%のCBをSPCが取得

SPCがソニー株の大量保有報告書を提出

ケイマン諸島の特別目的会社(SPC)であるシグナム・コーラル・リミテッドが同日、ソニー株を10%超保有するとの大量保有報告書を提出した。
大量保有報告書の提出で発覚したようだ。どのようにして調達したのかを見てみよう。

投資家からCBを取得

SPCは11月30日にゴールドマンの関係会社を通じ、ソニーのCBを購入した複数の投資家から1億1755万株(発行済み株式の10.5%)にあたるCBを取得した。
CBを転換後、5%を超えて取得している。ソニーの投資家情報で、大株主の状況を見ると、その10.5%の数字の重みが分かる。大株主は、信託が中心となっている。

  1. Moxley and Co. LLC(注1) 69,745 6.9%
  2. 日本トラスティ・サービス信託銀行㈱(信託口)(注2) 62,660 6.2%
  3. 日本マスタートラスト信託銀行㈱(信託口)(注2) 49,363 4.9%
  4. SSBT OD05 Omnibus Account - Treaty Clients(注3) 22,958 2.3%
  5. 日本トラスティ・サービス信託銀行㈱(信託口9)(注2) 13,683 1.4%
  6. 日本トラスティ・サービス信託銀行㈱(信託口1)(注2) 11,373 1.1%
  7. State Street Bank and Trust Company(注3) 10,977 1.1%
  8. 日本トラスティ・サービス信託銀行㈱(信託口6)(注2) 10,970 1.1%
  9. 日本トラスティ・サービス信託銀行㈱(信託口3)(注2) 10,330 1.0%
  10. Tam Two(注3) 9,982 1.0%
では、ゴールドマンサックスの販売先を見てみよう。

社債部分を分離して販売

SPCはCBを株式に転換できる権利部分と、社債部分に分離。社債部分は利率を付けて新たな投資家に別の金融商品として売却した。
社債部分は、新たに売却したようだ。転換社債は、新株予約権を付与する分、利率が低く抑えられるのが一般的だ。では、ゴールドマンサックスは、どこで鞘抜きをしたのであろうか。

CBを買い戻せる権利を売却

権利部分はSPCが保有するが、CBのもともとの投資家にCBを買い戻せる権利を新たに売却。投資家が権利を行使する際は、SPCが社債部分を購入者から買い戻し、もとのCBの形にして投資家に渡す保有は複数の投資家に分散しており、議決権が10%を超すような大株主が登場することはないとみられる。
ポイントは3点、やや警戒が必要かもしれない。
  1. CBのもともとの投資家は買戻しの権利を持つ
  2. SPCは買戻しの時の受け皿になる
  3. 保有は複数の投資家に分散
では、どういった点に警戒が必要なのか見てみよう。一言で言えば、水面下でソニー株式を買い集めることが可能になった点である。

大量保有報告書の提出が必要なし

最大で10.5%買い集めが可能

まず、(1)であるが、この買戻しの権利が、おそらく売買可能なのではなかろうか。報道からは不明であるが、そうだとすれば最大で10.5%分は買い集めれそうだ。買い集め方には、2パターンが考えられる。

(1)CB買戻しの権利を集める

CB買戻しの権利を買い集めたとしても、株式の保有はSPCだ。大量保有報告書はSPCの名前のままのため、実態は不透明なままである。

(2)分離した社債部分を買い集める

また、(3)複数の投資家に分散しているとされているが、この報道からは名義が不明だ。買戻しの権利の行使がなければ、株式にすることが可能だ。

ゴールドマンサックスは、この買戻しの権利の販売で利鞘を稼いだのであろう。ソニーのCDSに倒産懸念が表れ始めており、マネーゲームの舞台になる可能性が浮上している。

ソニーの転換社債をゴールドマンサックスが株式を分離したと報道がされたが、分離することで、大量保有報告書を提出すること無く、見えない形で10.5%分の株式を買い集めることができるようになったと言える。ソニーにとって、突然、思わぬ大株主が出現する可能性がでてきた。ソニーCBの資金使途と苦境に続く。
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